旅するエルフのVRC紀行ブログ

VR世界を旅し、「やさしさ」と「愛」をもって人に接したいエルフが書いてます

聖夜の奇跡

聖夜の奇跡

作:ヨーシャ(るいざ・しゃーろっと)

はじめに

この作品はFM言ノ葉で行われた企画、「第5回 きっとあなたの1400字」に投稿した作品になります。

この作品はるいざ・しゃーろっと全集 第1巻 PDF版の他に、VRCReady23_2-3月号にも掲載されています。

なお、この前投稿した「主は、希望は、我の傍らにあり」の前日譚となる作品です。

https://louisa-charlotte.hatenablog.com/entry/kotonoha2022-dec-24louisa-charlotte.hatenablog.com

本文

 クリスマスが近付くと、本当に憂鬱な気分になる。
 恋人たちとイチャイチャしてる友人たちの何気ない会話。そんな僕は、ついさっきふられたばかりだ。片思いの女の子だったけど、他に好きな人がいるんだって。ああ、これで僕も、クリぼっち確定か。ひとりでクリスマスを迎えるのが、ホントつらい……。コミュ障な僕には、たぶんいっしょにいてくれる人なんて、いない……。
 そんなやさぐれた僕はが向かったのは、夜の街。場末のバーで深酒をしてしまった。テキーラを何杯あおっただろうか。でも、何か酔えなかった。酔ってる気持ちにならなかった。まだまだ、飲み足りない……。そんな僕の様子を見たマスターが、もうそのぐらいにしとけってチェイサーを出してくれたけど、そこから僕の記憶はしばらく途切れていた。
 千鳥足で帰る僕。もうどうにでもなってしまいたい、そんな気持ちが胸をよぎった。ホームの端で破滅を待つ僕の心は、誰にも受け入れられなかった寂しさで満ちあふれていた。だけど、肩を叩いてくれた人の顔を見て、僕は破滅へ突き進むのをやめることができた。
「……神父、様?」
「イオシフ君、だね。相当つらいことがあっただろうから、お話を聞かせてほしい」
 肩を叩いてくれたのは、通っている教会の神父様だった。破れかぶれになっている僕に差し伸べられた救いの手、その時、はっと気付いたんだ。その重荷を、委ねようと。
「うん、とてもつらいことがあったんだね……でも、イオシフ君はすごい。なぜなら、絶望に身を委ねなかったんだから」
 ふっと、涙が出てきた。
「神様は、『人がひとりでいることはよくない』って思ってたんだよ。だから、アダムのためにイヴを創ったんだ。ひとりでいると、だんだん悪い方悪い方に考えてしまうからね」
 もう、涙しかなかった。
「その重荷、いっしょに背負おう。今度のクリスマスに聖堂に来て、ちゃんと痛悔することだよ。きっと、神様も赦してくれる。神様もイオシフ君といっしょにいる、そのことを忘れないでほしいな……」
 星が、綺麗だった。涙ながらに、僕は決心した。僕は、もう、ひとりじゃない。絶望の虜に、なっていてはいけない。

 そして、イヴの夜に、僕は神様に自らの罪を告白してきた。ここに仲間はいるし、前を向いていれば、きっと救いはある。そんな思いを抱いて聖堂を出たその時だった。悪そうな男に絡まれている彼女の姿を見て、僕はとっさに叫んでいた。
「やめろ、彼女に、手を出すな!!」
 逃げていった男と、怖さのあまり立ちすくんでいる彼女。彼女の涙からは、大粒の涙がこぼれていた。後日聞いたところによると、無理にホテルに連れ込まれそうになったのだが、間一髪のところで僕が助けられたとのこと。涙を流す彼女に、僕は不意に抱きしめられた。
「……ごめんね、今まで気がつかなかったの。私の王子様が、今ここにいるんだ、って……」

 そして、月日は流れた。聖夜に通った教会で僕の隣に立っているのは、あの日涙を流していた彼女だ。そんな彼女が着ているのは、純白のウェディングドレス。あれから僕たちは、恋人同士になった。時にはケンカもするけど、必ず仲直りして、お互いを思いやり今まで続いてきた。そして、これからも、死ですら僕たちの間を分かたないだろう。あの日、心を開いて聖堂に通わなかったら、この日はなかったのだから。

 愛する人よ……私といっしょにいてくれて、ありがとう!!
 そして、すべてに、ありがとう!!

降誕祭

降誕祭

作 路易莎夏洛特(るいざ・しゃーろっと)

はじめに

この記事は言の葉の集い Advent Calendar 2022の12月25日(日)の記事です。

この作品はるいざ・しゃーろっと全集 第1巻 PDF版に掲載されています。

はい、トリは、漢詩です!

しかも一部の人には刺さるかもしれません。

落日猶燈火
昏鐘響茗渓
鰥民催小宴
聖夜勿悲啼

書き下し(ひらがな)

らくじつなおとうかあり
こんしょうめいけいにひびく
かんみんしょうえんをもよおす
せいやはひていするなかれ

現代中国語ピンイン

luòrì yóudēnghuǒ
落日犹灯火

hūnzhōng xiǎngmíngxī
昏钟响茗渓

guānmín cuīxiǎoyàn
鳏民催小宴

shèngyè wùbēití
圣夜勿悲啼

意味

日が落ちても街の灯りが煌々と輝き
御茶ノ水には夕方の鐘の音が響く
中年ぼっちが小さな宴を開いているのだから
クリスマスを嘆き悲しんではいけませんよ

語注

  • 茗渓:御茶ノ水の雅称
  • 鰥民:老いていて妻のない民

平仄・韻

八斉

平仄

仄仄両平仄
平平仄仄平
平平平仄仄
仄仄仄平平

終わりに

ということで、お楽しみいただけたでしょうか?

追伸

漢字間違えていましたので修正しました。

ウクライナ発吉祥寺行き、思い出を揺さぶる旅

ウクライナ発吉祥寺行き、思い出を揺さぶる旅

はじめに

この記事は、 VRChat Advent Calendar 2022 の12月25日分の記事です。

とんでもないワールドが現れた

なんと、とんでもないクオリティのワールドが現れました。

nyanyaさんという方が作成した、京王電鉄京王井の頭線井の頭公園駅の再現ワールドです。

驚くべきは、そのクオリティ。

これ、実物かと見間違えてしまいそうです。

しかも、街並みも再現されていてすごいのです!

こんなところや……

こんなところ。

空から見ても、実にクオリティが高いわけで……。

なんと作者はウクライナの方だった。

しかも、驚くべきことは、なんとこのワールドの作者、日本人ではないのです!!

まあ、ウクライナに関しては今年の秋にいろいろあって共感する身なのですが……なんで井の頭公園駅なんでしょう?

(詳しくは下記記事を)

louisa-charlotte.hatenablog.com

louisa-charlotte.hatenablog.com

いや、もう、ホント、驚きしかないです。

しかも思い出が大爆発

しかも、この井の頭公園駅、私の思い出の地でもありました。

私はここから2つ渋谷寄りの駅、久我山に住んでいて、家の前の某都立高校に通っていました。

その都立高校は彼氏彼女の事情のエンディングに出てきてて、実際部活やってた際に庵野監督と遭遇してびっくりしたことがあります。

まあ、それはさておき、井の頭公園は行事の夜練や打ち上げでよくお世話になったところです。
夜の井の頭公園で応援団のダンスの練習に明け暮れた毎日もありました。

しかも、桜がきれいなので、毎年春になれば写真を撮りに行く場所でもあります。
ちなみに、下の写真もフィルムはなんとウクライナ製、で、自家現像。

それゆえに、思い出深い、場所なんです。

改札から出るには

さて、このワールド、最初は改札からは出られないようになっています。

改札から出るには、ちょっと工夫が必要ですが、ここにはヒントと思われる2つの写真を貼っておきます。

で、うまく脱獄できると、井の頭公園駅の外に出られるわけです。

このワールドのツッコミどころ

このワールドには以下の3つのツッコミどころがあります。

  1. インターホンの表記が「インタホーン」になっている。
  2. 改札に貼られている交通系ICカードの案内が関西のものになっている
  3. 中国語の文字が違う

特に、中国語の文字が違うのはある意味ややっこしいことがあるわけです。

そう、両岸問題です。

と、現実にはこうなっています。これも全部モスクワと北京のプーさんのせいなわけで。

現実に行ってきました

さて、思い立って現実の井の頭公園駅に行ってきました。

その上で、こんな思いも胸にしたのでした。

そしていろいろ案内してきました

さて、この井の頭公園駅には、「るいざの気まぐれワールドツアー」でも訪問しました。

みんなでぱしゃりの写真を最後に、この記事を締めくくらせてください。

続きを読む

主は、希望は、我の傍らにあり

主は、希望は、我の傍らにあり

作:ヨーシャ(るいざ・しゃーろっと)

はじめに

この記事は、言の葉の集い Advent Calendar 2022の12月24日(土)の記事です。

この作品はるいざ・しゃーろっと全集 第1巻 PDF版に掲載されています。

ちょっと重めの小説ですが、お読みいただければ幸いです。

なお、明日ももう1本用意しています。

本文

 僕らを乗せた飛行機は、雪の新千歳空港にたどり着いた。機体から降りると、冬の北海道のひんやりとした空気を肌に感じる。僕のふるさとである札幌まで、まだしばらくかかるだろう。
 今年も降誕祭の日がやってきた。
 ……あの聖夜の奇跡から、もう一年が経ったのか。あの日、僕は聖堂の前で暴漢に襲われかけていた明日香を助け、それが縁で、あの聖堂で結婚したのだった。そんな明日香といっしょに、二人が結ばれた聖堂で、降誕祭をいっしょに祝いたかった。だけど、突然やってきた中学・高校時代の友人の自死の報せにどうしても彼の眠りを祈らなければいけないと、高校時代をいっしょに過ごした札幌に急遽帰ることにしたのだった。急に決めたこの旅に、明日香が同行してくれることが心の救いだった。
「もうそろそろお義父様が迎えに来るころね……」
 手荷物受取所から外に出ると、早速父が迎えに来ていた。父も友人の死の知らせを聞いて愕然としていたらしく、いっしょに札幌に帰る車の中では無言が続いていたのだった。そして僕の実家の前に車はたどり着いた。トランクケースを車から降ろして、玄関へと歩む僕の足は、すでに北海道の雪道の歩き方を忘れていた。ましてや、東京生まれである明日香にとって、雪道を歩くのは初めてなのだ。いっしょに手を取り歩く玄関までの道のりも、夏の何倍も大変だった気がするのだ。
「お、ユウスケも大人になったもんだな……」
 父が感心そうに僕を見つめている。ドアを開けると、母も迎えてくれた。
 友人が自死を選んだのは、降誕祭前の月曜日だった。中学高校時代は文武両道でサッカー部のエース、大学も世間的に見れば難関校に難なく受かり無事一流企業に就職、そして当時僕が片思いだった人とも結婚して順風満帆な生活を送っていると思っていたのだ。まさか、会社でのパワハラを苦に破滅に突き進むとは思ってもいなかったのだ。あの人に、なんて言葉をかけたらよいのか悩む僕に、明日香は道しるべのような言葉を託したのだ。
「神父様に、お電話してみたらどうですか?」
 そんな、僕の脳裏には神父様のあの言葉が思い浮かぶ。
「何か困ったことがあったら、気軽に相談してほしい。イオシフ君は些細なことで思い悩むから。でも、主も、そして僕らもイオシフ君といっしょだということを常に忘れないでほしいな……」
 この言葉にはっと思った僕は、あわてて神父様に電話した。
「もしもし……あ、イオシフ君か。この度は大変だったね……」
 神父様の言葉を聞いたとき、僕の目尻が潤むのを感じた。
「何もできなかったことが、つらかったんだね……」
 その言葉を聞いたとき、何かが決壊したのだった。
「ハリストスがこの世界に降臨したのは、主が人間としての苦しみを分かち合いたいという愛のおかげなんだ。ハリストスは死という最大の苦難を分かち合い、そしてそれを打ち破って復活したんだから。だから、今は、残された人々の苦しみを分かち合うことが大事だよ。絶えず主に祈りつつ、その友人さんが救われることを主にとりなすこと、それがイオシフ君の役目だよ」
 もう、涙も、声も抑えられなかった。父も、母も、そして明日香も見ていることを忘れていた。声を上げて、泣くしかなかった。
「あの時、絶望を選ばなかったイオシフ君は、十分に強いよ。主が、いっしょにいてくださるのだから、あの日結ばれたナデジダさんといっしょにどんな苦難も乗り越えられるって私は信じてるよ。だから、もう、絶望に身を委ねなくてもよいんだ。後は、その友人さんを主がお救いくださるよう、常に記憶して祈っておくことだよ」
 そして、クリスマスイブになった。今日、友人のお通夜が行われる。本来だったら僕と明日香は喪服に身を包み、葬儀会場のお寺に赴いたのだった。お寺に着いてみると、彼の奥さん、そして過去に片思いしていた人は喪主を務めていたのか慌ただしく動き回っている。だけど、その背中には愛する人を失った悲しさが浮かび上がっていた。そんな僕は奥さんに声をかける。
「この度は悲しい知らせでしたね……。安らかにお眠りくださることを心からお祈りいたします……」
 この言葉を紡ぐのにも、苦労した。何せ、目の前にいるのは、かつて僕が好きだった人だったから。今では、隣に大事な人がいるけど……。そんな奥さんに、僕たち二人はクリスチャンなので焼香は遠慮する旨を伝えたのだった。本来だったら、大聖堂で降誕祭を祝っている時間だ。だけど、僕は、僕たちは寄り添いたかったのだ。友人の苦しみ、そして残された人の苦しみに。焼香台が僕たちの前に回ってくると、僕たちは焼香せずに一礼して隣に回したのだった。そして、お坊さんがお経を唱えている。本来聖歌を聞くはずの降誕祭にお経を聞くなんて、思いもよらなかった。だけど、友人を失った苦しみを僕たちはみんなと分かち合おうとしていた。そして、お坊さんは法話をはじめたのだった。
「元々、私は定年まで倫理社会の教員をしていまして、最後のテストにこんな問題を出しまして……。『両手を打つと音が響く。では、片手の音はどんな音がするか』と。その時に指パッチンと答えた生徒が本当の答えを知りたいと私の所に来たのですよ」
 どうやら、このお坊さんは、当時の教え子を街頭ピアノに連れて行って雑踏に流れる様々な音を聞かせたらしいのだ。これが片手の音だと、お坊さんは言っていた。常識にとらわれていると、答えを見失ってしまう。そこは、一つ、僕らとの違いを見たような気がしたのだった。
 お通夜の後に友人の眠りし顔を見たとき、本当に苦しみのない顔をしていた。苦しみから、解放されますようにと僕たちは祈って十字を描いていた。そこに、あのお坊さんが通りかかったのだった。僕たちのことをとがめるどころか、式に参列するだけでもよいものだと伝えてくれた。
「亡くなった方の、そして周りの人の苦しみを分かち合う……それができれば、よいと思いますよ」
 僕は、そんな言葉をくれたお坊さんに教えられた生徒さんは幸せなんだろうな、と心から思ったのだった。
 僕たちは、翌日の葬儀にも参列した。彼の奥さんとは昔語りもしたけど、その時の記憶はあまり残っていない。僕には、もう明日香が、ナデジダがいるから。結婚のために洗礼を受けた明日香に付けられた聖名は、希望を表すナデジダという言葉だったことを思い出した。僕は、あの日、希望を護り、そして希望を得たのだった。もう絶望に打ち負かされている僕ではないんだなと、心から気付いたのだった。出棺を見送った僕たちは葬儀場を後にすると、北海道の雪道を二人で歩いて帰った。
「本当に、いろいろあったのね……だけど、ユウさんとならどんな苦難も乗り越えて行けそう。だから、これからも、ね……」
 明日香が頬を染めて優しく微笑みかける。彼女は、僕の希望だ。雪道に慣れない彼女を支えながら、僕たちは一歩一歩、前に進んでいる。僕には主も、そして希望もいっしょにいるから。どんな死の谷影ですら、うまく進むことができると、心から信じていた。
 あの日、絶望に身を委ねないで、本当によかった……。

ぜんぶ、雪のせいだ

ぜんぶ、雪のせいだ

作:ヨーシャ(るいざ・しゃーろっと)

はじめに

この記事は、言の葉の集い Advent Calendar 2022の12月9日(金)の記事です。

この作品はるいざ・しゃーろっと全集 第1巻 PDF版に掲載されています。

あ、JR東日本様、ごめんなさい。

本文

カーテンを開けると、そこは銀世界だった。
コロナ禍のこのご時世に珍しく、俺は出社しないといけない。
だが、この雪ということは電車が確実に乱れているはずだ。
ということは……もう出なければ会社に間に合わないじゃないか!
ぜんぶ、雪のせいだ!

バス停まで歩いて行くと、ものすごい行列ができていた。
バスは来るのだが、三人乗れるのが精一杯で、待っている人が多いと積み残される。
しかも、雪なので時間通りに来ないのだ。
なんだかんだで、もう、三本ぐらいバスを見送っただろうか。
外の寒さが寝不足の身体にこたえる。
ぜんぶ、雪のせいだ!

やっとの事で駅にたどり着いた。
電車はかろうじて動いているが、ダイヤはかなり乱れていた。
女性専用車が今日はないから、男の俺が乗れる車両は一両増えるんだが、大変な人は多いだろうな。
駅に貼ってあるスキー旅行のポスターみたいに雪を楽しめたらよいんだが、あいにくながら俺は仕事だ。
ぜんぶ、雪のせいだ!

当然、来た電車は、満員だ。
いわゆる、密ってやつだ。
マスクはしてあるしワクチンも規定の回数打っているが、それでも恐いものは恐い。
普段だったら空いている各駅停車も、今日は肩と肩が触れるほどの混雑だ。
そんな各駅停車も満員で、寒い中積み残されて乗れないことがある。
こんなことになるのなら、昨日、カワイイムーブを決めてはしゃぎすぎていなければよかった。
ぜんぶ、雪のせいだ!

もちろん、電車はのろのろ運転。さらに、何かあると、すぐ止まる。
こんな感じでは、始業時間までに会社に着けそうにない。
スマホで遅刻の連絡を上司にメールする。
上司もわかっているらしく、大変だね、と優しい言葉。
でも、遅刻で減給になってしまうのはしかたがない。
ああ、お金が、飛んでいく……。
ぜんぶ、雪のせいだ!

さて、SNSにぼやきの言葉でも上げようかとおもったその時だった。
誰かが助けを求めている知らせが、俺のスマホに入ってきた。
近頃の電車は痴漢も多いと聞く。
なので、そういう人を手助けできるように、俺はスマホに助けを求める信号を受信できるアプリを入れている。
そのアプリから通知が来たのは、初めてだった。
しかも、同じ車両……しかも、かなり近い。
俺はスマホを見るのをやめ周りを見渡すと、正面に困った表情をしている制服姿の女子高生の姿が見えたのだった。
しかも、その後ろで手をもぞもぞと動かしている男がいる。
あれは間違いない、現行犯だ。
そんな俺は、とっさにその男の手を掴み、叫んでいた。
「この人、痴漢です!!!」
ぜんぶ、雪のせいだ!

次の駅で俺と女子高生、そして男は降りるはめになった。
駆けつけてきた駅員。
男は俺にこいつが痴漢だと言いがかりを付けてきたと叫んだ。
そして、俺に「モテなさそうだからって女を助けるのか」と馬鹿にしてきた。
沸点が近くなってくるのがわかるが、一生懸命抑えつつ、駅員に事情を説明する。
男が、彼女の身体を触っていたことも。
彼女も、触られていたんですと駅員に訴える。
事情を察した駅員はすぐに警察を呼んだようだ。
ほどなくして警察官が到着。
俺たち三人は署まで同行を求められることになった。
これで、会社は大いに遅刻か。
さよなら、俺の給料。
ぜんぶ、雪のせいだ!!

署に向かう途中に、会社に連絡を入れた。
会社に事情を話すと、安心して事情聴取に協力してほしいし、今日は仕事にならないだろうから特別有給休暇を出すと言われた。
ということは、年休を減らすこともなく、給料も出してくれるってことだ。
でも、これから行くのは警察署だ。
やましいことはしていないが、なんか入るのが恐いところでもある。
まさか、署まで同行願いますを体験することになるなんて……。
ぜんぶ、雪のせいだ!!!

長かった事情聴取が終わり、俺は問題ないことになった。
そして被害に遭った女子高生に連絡先を伝えようと名刺を差し出したその時だった。
俺は名刺を間違えていたことに気がつかなかった。
俺が出した名刺は、VRの世界の名刺だった。
それも、よりによってカワイイムーブ全開しているあの娘の姿で。
出した瞬間、あまりの恥ずかしさで固まってしまった。
これは、すべて、終わった……。
ぜんぶ、雪のせいだ!!!!!

だが、それをみた彼女から語られた言葉は、意外なものだった。
「あ! あなたが、ゆいちゃんだったんですね? 私、レイです!」
レイさんといえば、いつもクールでかっこいい男性アバターの人だ。
中の人が男性の俺ですら、その表情と口調にはドキッとしてしまうぐらいかっこいい人なのだ。
しかも、前の晩にいろいろ雑談してたのは、彼だったのだ。
お互いボイチェンを使っていたから、お互いの存在に今まで気がつかなかったわけで。
まさか、彼の中の人が、こんなかわいい女の子だったとは。
あまりの衝撃に、頭が真っ白になっていた。
ぜんぶ、雪のせいだ!!!!!!!!!!

そんなこんなでレイさんの中の人を知ってしまった。
早めに帰ってVRに繋いでみると、そこにはレイさんが待っていた。
「きょうのゆいちゃん、カッコよかったですよ。私、ときめきました……」
何か、レイさんとの距離がぐぐっと近付いたような気がする。
そして、唐突に、壁ドン。
「もっと、親密に……なりたいなって……」
雪でダイヤが乱れてなければ、まさか警察署でオフをするなんて前代未聞のことは起こらなかっただろう。
レイさんとあたしの距離は、ぐっと近付いていた。
これは、きっと雪のおかげだ。

そして、あたしは、レイさんの腕に抱きかかえられていた。
そんなレイさんから、お砂糖になってほしいといわれて、あたしは反射的に首を縦に振ってしまった。
それを見た周りのみんなから、一気に「お砂糖おめでとうございます」という祝福の声が響く。
もう、あたしの胸は、どきどきでいっぱいだった。
ぜんぶ、雪のおかげだ。

なにがあったのかって?
答えは、雪に聞け。

私の主催する各イベントでのコミュニケーション多様性への対応について

私の主催する各イベントでのコミュニケーション多様性への対応について

私は「るいざの気まぐれワールドツアー」や「VRC歴史集会」、様々な休日・記念日集会などを開催しています。

先日、とあるイベントでイベント主催者と聴覚障がい者の方でのコミュニケーションの行き違い(および排除)があったという知らせを聞きました。

各イベントでのコミュニケーション指針について

私の主催する各イベントは基本的にいろんな人を受け入れたい方針ですが、「VRC歴史集会」などセンシティブな話題を扱うイベントもあります。

そのため、私の主催する各イベントにおけるコミュニケーション多様性について、現状の方針を載せておきます。

「VRC歴史集会」に関して

歴史は政治や宗教とも密接に関係する、ある意味センシティブな話題です。

そのため、他のイベントより厳しめの条件を付ける予定です。

また、イベントもGroup機能が安定して使えるようになるまではInvite Onlyで開催し、事前申請のあった方を受け入れたいと思います。

具体的には、以下のような方針で考えています。

  1. 歴史認識および政治観の違いについて、異なる立場の方がいるということを許容できる方
  2. 海外の方を招聘する場合を除き、日本語でコミュニケーションができる方(支援技術を使ってもOK)
  3. HRT原則(「謙虚」・「尊敬」・「信頼」)を心がけられる人

なお、具体的な対応については以下の通りです。

  1. 海外からの参加者については支援技術を使ってもよいので日本語でコミュニケーションができ、歴史認識の違いを許容できる人を受け入れます。
  2. 聴覚障がいの方に対しては、音声認識Chatboxと筆談で対応します。また、手話も勉強中です。
  3. 視覚障がいの方に対しては、希望があれば読み上げに対応した資料を配付します。

また、海外の方を招聘する場合は、通訳スタッフを募集し、通訳をお願いする形になるかもしれません。

その他のイベント(「るいざの気まぐれワールドツアー」など)に関して

その他のイベントに関しては、センシティブな話題が少ないと考えられるので、Friend+で開催します。

また、コミュニケーションに制約のある方もなるべく受け入れる方針ではありますが、主催の能力不足により手が回らなくなるかもしれない事をご留意ください。

具体的な対応については以下の通りです。

  1. 海外からの参加者も歓迎いたします。ただし、コミュニケーションは日本語で行われるため、日本語が苦手な方はOSC-SRTCゆかりねっとなどの支援技術を利用することを推奨いたします。
  2. 聴覚障がいの方に対しては、現状はOSC-SRTCによるChatboxでの字幕表示にて対応しますが、海外の方がいる場合は字幕の切り替えが必要なため、即時の対応が難しいことをご留意ください。将来的にはアバターにペンを仕込んで筆談したり、手話でコミュニケーションができるようにしたりということも対応予定です。
  3. 視覚障がいの方に関しては、音声コミュニケーションで対応します。「るいざの気まぐれワールドツアー」においては行く先のワールドをすべて事前に告知するので、対応が難しいワールドの場合はご相談いただければ幸いです。

なお、私ひとりで限界になっても対応できるよう、できる限り通訳スタッフを確保できればと考えています。

通訳スタッフご協力のお願い

私は「壁」を作ってしまいたくないと考えています。そのため、できる限り様々な人とコミュニケーションをとりたいと考えています。

ただし、私ひとりでできることには限りがあります。そのため、コミュニケーションに制約がある方が参加する場合、通訳スタッフとしてご協力いただければ幸いです。

なので、海外の方が参加する場合や手話話者の方が参加する場合、こちらから通訳スタッフとしてお声がけをするかもしれません。

私もコミュニケーションできるように努力いたしますが、その際はご協力いただけると幸いです。

コミュニケーションに制約がある方へのお願い

私は手話話者や海外の方など、コミュニケーションに制約がある方もなるべく受け入れたいと考えています。

ですが、私の能力の限界を超えてしまう場合もあります。

当日の参加でもかまいませんが、円滑なコミュニケーションがとれるようベストを尽くしたいと考えていますので、ご参加をお考えの場合は事前にご一報いただけると助かります。

また、私がひとりで対応する場合は能力の限界を超えてしまって対応できないかもしれませんが、なるべくベストを尽くすことをご理解いただけると幸いです。

最後に

私は「壁」を乗り越えたいと考えています。能力の限界があるかもしれませんが、なるべくベストを尽くしますので、お赦しいただけると幸いです。

OSCを使った自動翻訳ツール「OSC-SRTC」のすごさに身震いしました

OSCを使った自動翻訳ツール「OSC-SRTC」のすごさに身震いしました

はじめに

この記事は、 VRChat Advent Calendar 2022 の12月1日分の記事です。

とりわけ、私は

VRChat世界を旅する、「やさしさ」と「愛」を以て他者に接し、国境やことば、障がいや年齢、性別といったあらゆる壁を乗り越えたいと考えるエルフです。

と自己紹介に述べているように、「壁」を越えていろいろな人と接することを信念にしています。しかし、そんな私でも言葉の壁を越えるのは大変でした。そんな私が見つけたツールが、Rera*Cさんという方が作成した、この「OSC-SRTC」というツールです。

OSC-SRTCについて

今回紹介する「OSC-SRTC」というツールは、VRChatで言葉を翻訳して字幕を出すツールです。

【無料】OSC-SRTC (SpeechRecognition To Chatbox) [V2.5 update] - 高校生開発者の秘密(?)研究所 - BOOTH

以下のような原理で動いているようです。

  1. しゃべっている音声をマイクから拾う
  2. 拾った音声を認識
  3. 認識した言葉を好きな言語に翻訳
  4. 翻訳された言葉をOSCでVRChatのChatboxに送る

これによって、非日本語話者にメッセージを伝えることができます。現在対応している言語は12/1現在で以下の通りです。

と、この中の多くは私が要望を出したものなのですが……。 相手の方にインストールしてもらった上で、お互いでChatboxを見えるように設定する必要がありますが、これができれば急な海外からの来訪者にも対応できるというわけです。

もうひとつの「壁」を越える

と、この字幕を出すツールですが、これは「言葉」の壁を越えるだけに留まりません。このツールは翻訳無しに日本語の音声を認識し、日本語のまま出力することも可能です。そうすると、日本語でしゃべった言葉を認識した日本語の文章がChatboxに表示されるわけです。

日本語で会話しているのになんで日本語の字幕を付ける必要があるのでしょうか。答えは、この記事の中にあります。

「邦画に日本語字幕を」 難聴の漫画家の切実な願いを描いた話に「めちゃくちゃ共感」「ハッとさせられた」(1/2 ページ) - ねとらぼ

そう、このツールを使えば、聴覚障がい者にメッセージを伝えることはできるのです。

なお、VRChatにはラファエルさんという聴覚障がい者による、手話の勉強会があります。

また、VRChatには聴覚障がい者のみならず、視覚障がいを持つユーザーもいます。このツールを使えば、聴覚障がいを持つ人に、視覚障がいを持つ人がメッセージを伝えることができるのです!!

それを考えると、「OSC-SRTC」は言語だけではなく、障がいの「壁」を越えられる、非常に大きなポテンシャルを秘めたツールであると言えるでしょう。

ただし、以下のツイートにあるように、あくまでも補助手段と留意しておくことは必要だと思いますが。

もはや、「壁」に苦しめられた私ではない

正直、この9月から、いろいろな「壁」に苦しめられてきました。私立VRC学園の8期に落ちてしまったときの「壁」は乗り越えられるかわからないほど落ち込んでしまったものです。これについては、以下の過去記事をご覧ください。

louisa-charlotte.hatenablog.com

そして、学園は無事卒業できたのですが、「壁」を感じる出来事がつい先日にもありました。

私がじゃぱんくえすたの会場で開かれているイベントに参加中のフレンドにJoinしようとしていました。その中にはNEKO旅さんという「VRC世界旅行」という海外ワールドをめぐるワールドツアーを行っているイベントの主催者さんもいたのですが、表示されていたのはロシアのワールドでした。もしかしたらNEKO旅さんが海外のワールドを案内しているのかなとおもってJoinしたその時でした。NEKO旅さんたちはそのワールドにいなかったのです。そのワールドにいたのはロシアやベラルーシのフレンドさんでした。そう、ソーシャルバグで、私はロシア人たちの中に放り込まれてしまったのです!!

言葉が通じないことがここまで不安になるとは思いもよりませんでした。周りから聞こえるロシア語も、何を言っているのか全くわからないのです。そんな中、フレンドさんは英語でコミュニケーションをとろうとしますが、そういう私もうまくコミュニケーションを取れず、逃げ出す形になってしまってホント申し訳ないという思いしかありませんでした。さらに、そのフレンドさんが行くところ行くところに来てしまうので、困ったあげくにステータスをオレンジにしてイベントについてもInvite Onlyで開催するなど、「壁」を作ってしまうことを心苦しく思っています。このように、言葉の「壁」が原因で、他の「壁」を作ってしまう事例は結構あると聞いていますが、このOSC-SRTCはそんな壁を打ち破ってくれるツールであると感じました。実に、感動してしまいます。

作者さんを支援したいものの……

で、このツールは無料で使えます。BOOTHでは作者のRera*Cさんへの有料支援版もあるにはありますが、作者さんは報酬を受け取れていないのです。何故かというと、作者さんは韓国の高校生なので、BOOTHの収益を受け取るすべがないのです。

まず、BOOTHの収益を受け取るには日本国内の銀行口座かPayPalのアカウントが必要です。日本国内の銀行口座は日本に住んでいる人しか作れないので、韓国に住んでいる作者さんはPayPalで受け取るしかないのです。しかも、作者さんは受験を控えた高校生です。未成年なので、PayPal経由でも収益を受け取れないのです。

ホント、このツールは無限の可能性を秘めたツールであり、私としては作者さんに何らかの支援を行いたいところなのですが、支援するすべがないのが現状です。なにか、妙案があればよいのですが……。

OSC-SRTC 非公式紹介集会やります

さて、このようなステキなツールですが、このツールをいろいろな人に知ってもらいたいと思い、【12/10(土) 21:00〜21:50】に非公式の紹介イベントを開催します。 このツールを使っているところを実演してみたいと考えています。 興味ある方、足を運んでいただければ幸いです。

長々とお読みいただき、誠にありがとうございました。